概要
HEXシリーズは、複数の粒子が同時または短い時間差で到達する測定に向けたMCPディレイライン検出器です。2次元の到達位置と時刻を記録し、3層のHexanodeから得られる信号を利用して近接イベントを再構成します。
通常のDLDが2方向の遅延線を使うのに対し、HEXは異なる3方向に配置した遅延線から計6本の信号を読み出します。この追加情報が、複数のイベントの対応付けに役立ちます。
特長
- 高いマルチヒット性能
近い時間間隔で複数の粒子が到達する実験でも、イベントをより正確に分離・解析できます。 - 位置と時間を同時に測定
MCPとディレイライン読み出しにより、粒子ごとの到達位置と到達時間を取得できます。 - 3層Hexanodeによる安定したイベント再構成
3方向の信号情報を利用することで、複雑なマルチヒットイベントの解析に適しています。 - 高度なコインシデンス実験に対応
分子解離、反応顕微鏡、運動量イメージングなど、複数粒子の相関を扱う実験に有効です。 - 用途に応じたシステム構成
高電圧電源、FT16-TPフィードスルー、アンプ、CFD、TDC、高速ADC、解析ソフトウェアと組み合わせて構成できます。わせて、実験内容に合わせた構成が可能です。

DLDとHEXの比較
HEXシリーズは、DLDと同様に位置情報と到達時間を測定できますが、複数の粒子が同時または短時間差で到達する実験において、より高いイベント分離性能を発揮します。
以下は、RoentDekによるシミュレーションおよび測定例です。
マルチヒット性能の比較
検出領域の違い
左は一般的な2層ディレイライン(Square DL)、右はHexanode(HEX)のシミュレーションです。
- DLD(Square DL)では読み出し構造の影響により、イベントが分割されやすい領域が存在します。
- HEXでは検出領域全体でより均一なイベント再構成が可能となり、有効検出領域を効率的に利用できます。

COLTRIMSシミュレーションによるイベント再構成の比較
同時到達イベントの分離性能
複数の粒子が非常に短い時間差で到達した場合のシミュレーションです。
- DLDでは読み出し方向に起因するデッドエリアが現れ、近接したイベントの識別が難しくなります。
- HEXでは3方向の読み出し情報を利用することで、このようなデッドエリアを大幅に低減し、イベントの分離性能を向上させます。
そのため、電子・イオンのコインシデンス測定や運動量イメージングなど、高密度イベントの解析に適しています。

近接した2粒子イベントの分離性能
高イベントレートでの再構成性能
実際の比較データでは、HEXアノードは短い時間差で到達したイベントに対しても、リング構造を維持した再構成結果が得られています。
一方、DLDではイベント密度が高くなると、再構成が困難となり、位置分布に欠損やアーティファクトが現れます。また、図に示すように、
- DLD80 Anode:Δt < 100 ns
- HEX Anode:Δt < 5 ns
という条件でも、HEXはイベントを良好に分離できることが確認されています。
これは、HEXの3層Hexanode構造によって複数のイベントの対応付けを行いやすくしているためです。

短時間間隔イベントにおける再構成性能
DET / DLD / HEX の違い
HEXシリーズは、複数粒子イベントを高精度に分離したい実験に適した上位構成のディレイライン検出器です。
| 必要な測定内容 | 推奨検出器 |
|---|---|
| タイミング測定のみ / TOF測定 | DET |
| タイミング測定 + 2次元位置検出 | DLD |
| タイミング測定 + 位置検出 + 高いマルチヒット性能 | HEX |
| タイミング測定 + 目視・カメラ観察 | DET-P |
用途
DETタイミング検出器は、以下の機器と組み合わせて使用できます。
- COLTRIMS / 反応顕微鏡
- VMI / 運動量イメージング
- 分子解離・フラグメントイメージング
- コインシデンス測定
- 電子・イオン検出
- TOFイメージング
- ビーム診断・ビームモニタリング
- 原子・分子物理実験
- シンクロトロン・レーザー実験
- 高度な研究装置への組み込み
システム構成例
HEX検出器ヘッド
→ FT16-TP フィードスルー / 信号デカップラー
→ 高電圧電源
→ FAMP / CFD または ATR19 フロントエンド電子回路
→ TDC または高速ADC読み出し
→ CoboldPC データ取得・解析ソフトウェア
マルチヒット性能を最大限に活かすため、検出器サイズ、読み出し方式、TDC/ADC構成は実験条件に合わせた選定が重要です。

