

3D顕微レーザーラマン分光装置 Nanofinder 30A 概要
本装置は、水平方向(X、Y軸方向分解能)0.2μm以下、深さ方向(Z軸方向分解能)0.5μm以下の高い空間分解能で、3次元ラマンイメージングや分析が行えます。
ラマン分析は、他の分析手法と組み合せることにより分析能力が増大します。本装置は、お客様の日々変化していくニーズに応えられるよう、標準でのご使用はもちろん、後に拡張できるように設計しているので、アップグレードしていくことが可能です。
例として、ピエゾステージ、ガルバノスキャナーや、クライオスタット、加熱チャンバー、スキャニングプローブ顕微鏡(SPM)、ストリークカメラ、時間相関単一光子(TCSPC)との組み合わせや、非線形ラマン分光(CARSラマン分光法)にも拡張できます。
お客様の用途に応じてカスタマイズしていくことで、より生産性の高い複合型ラマン分光装置となります。ソフトウェアは従来より使いやすいものを開発、各種ハードウェアと連携がとれた測定が行え、効率的なデータ収集、明瞭な解析結果を提供します。
デモ測定を承っております。お客さまから「綺麗にデータが採れる」とお声を頂いております。またご購入後のアフターフォロー・保守サービスの体制も整えています。
Nanofinder®(ナノファインダー)シリーズ
― 空間分解能200ナノメートルで品質の良いラマン分光分析、解析評価を。
東京インスツルメンツは20年前に業界初の「空間分解能200ナノメートルのラマンイメージング」を先駆けて開発し、いまも「最先端の分析と評価技術」に挑み続けています。
特長
- 自由度の高いプラットフォームを活かし、さまざまな分析手法との複合が可能
- 微弱な励起レーザーを試料へ照射する為、ダメージが低減し、高感度かつ高速に分析
- 空間分解能:200nm(励起レーザー488nm、油浸レンズ使用時)
- 波数分解能:0.22 cm-1(エシェル回折格子)
- 非破壊で簡便に測定
用途
- 炭素材料の構造分析と品質評価
グラファイト、ダイヤモンド、カーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、ダイヤモンド状炭素 (DLC)膜、グラフェンなど - 太陽電池材料の解析と品質評価
セレン化銅インジウムガリウム(CIGS)、ペロブスカイト、量子ドット - サブミクロンスケール(1万分の1ミリ)以下の微小異物の検出と分析
- リチウムイオン(Li-Ion)電池材料の構造分析と品質評価
- 有機EL (エレクトロ・ルミネッセンス(電界発光))材料の構造分析と品質評価
- シリコンカーバイド(SiC:シリコン(Si)と炭素(C)で構成される化合物半導体材料 )などパワーデバイス材料の構造分析と品質評価
- 気体、液体、固体を問わず幅広い物質を分析
- 生物や人体組織などの非常に複雑な物質の分析と評価
ソフトウェア動画
効率的な研究開発をサポートする為に開発された新機能
3種類の検出器を同時搭載できる高性能分光器を採用

これまでの焦点距離520mm分光器に加え、焦点距離810mm分光器を選択できるようになり、従来より高いスペクトル分解能が得られるラマン分光測定が可能になりました。
これらの分光器はともに、異なる3種類の検出器の同時搭載が可能です。
※写真は新型焦点距離520mm分光器です。
蛍光による影響を低減し、高品質なラマン散乱光を検出
ラマン分光測定の邪魔となる蛍光の影響を低減する為に、最大5つの異なる励起レーザーと、それぞれの波長に対応したフィルターを同時搭載しました。これにより様々な試料に対してより最適な励起波長が選択でき、高品質なラマン散乱光を検出、明瞭な分析結果が得られるようになりました。
レーザーの切り換えは、ソフトウェアから自動で行えます。
紫外から近赤外の波長広帯域でも高感度のラマン分光分析を
本装置のラマン検出光学系ユニットは、紫外から近赤外まで(UV-VIS-NIR)の各々の波長域で最適化された検出光学系を同時に最大3種類まで搭載でき、かつ自動切替(オートメーション)が行えます。4枚のグレーティングを搭載できる分光器との組み合わせで、ラマン散乱光の検出効率を最大限まで引き上げました。
グレーティングの切り換えは、ソフトウェアから行えます(自動グレーティング切換機構)。
自動で波長校正(オートキャリブレーション)

本来、取得したラマンスペクトルの信頼度を上げる為には、励起レーザーの波長校正が欠かせません。
本装置は、波長校正用のネオン(Ne)ランプを光学系ユニットに内蔵している為、ソフトウェアから自動で波長校正します(オートキャリブレーション)。これにより、煩わしい波長校正の手間がなくなりました。
生産性が高いイメージング

複数の選択領域のマッピングが可能になりました。
モーターステージとピエゾステージとの組み合わせの構成では、広範囲領域はモーターステージ、微小領域ではピエゾステージが動くよう、ソフトウェアが、自動スキャン(判別走査)します。これにより、効率よく、品質の高い明瞭なデータが得られます。
オートフォーカスで明瞭なデータをより安定的に
オプションの共焦点光学系(コンフォーカル光学系)ユニットを搭載することにより、オートフォーカスが可能になりました。顕微鏡の機械的な焦点ドリフトや試料の傾斜があっても、追従して明瞭なデータが得られます。
更にこの共焦点光学系は、ラマン検出系と独立している為、感度やスペクトルの品質への影響は一切ありません。
最小5cm-1の極低波数領域にも対応
オプションの極低波数ラマン測定向けのフィルターを搭載すると、
最少5cm-1からの極低波数領域のラマン分光測定が行えるようになります。
ラマン分光装置の”+α”の拡張例
拡張例1:蛍光寿命測定システム

※フェムト秒レーザー・ストリークカメラとの組み合わせモデルです。
+αが「パルスレーザー、ストリークカメラ or 時間相関単一光子計数法(TCSPC)」を組み合わせると様々なダメージを受けずに試料内部の蛍光の特定や蛍光分子の環境変化などを高感度に検出する複合型ラマンシステムになります。
生物学などの研究では細胞内分子のダイナミクス観察、材料科学の研究では半導体材料におけるキャリアダイナミクス観察が行えます。
蛍光(PL)スペクトル測定、蛍光寿命測定、蛍光分析、生物科学用途に最適です。
ガルバノスキャナーとの組み合わせも可能で、クライオスタットなど温度制御チャンバーを用いた測定も可能です。
※尚、お客様の要望、カウンセリングにて構築する蛍光寿命測定システムや蛍光スペクトル測定システムもご用意しています。
環境制御下でのFLIMラマン測定、蛍光(PL)スペクトル測定や蛍光励起(PLE)スペクトル測定にも対応致します。
拡張例2:バイオ試料用モデル

本装置の倒立型とガルバノスキャナーを組み合わせると、試料を固定したまま、ラマン分析が行えます。
固定が難しい試料、細胞など生物系試料にお勧め致します。
拡張例3:非線形ラマン分光測定装置(CARSラマン分光法)

CARSは、コヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱の頭文字です。
非線形ラマン(通常のラマン散乱とは異なり、非常に強いラマン信号が得られる)を採用している為、高感度なラマン分光測定が行えます。
通常、細胞を測定するには染色等の処理をする必要がありますが、細胞を染色することなく、そのままの状態で、生体試料の測定(”その場観測”)が行えます。
分子レベルでの高感度観察や分析が可能になります。
その他の複合型ラマンシステム
- 高速で広範囲のラマン分光分析を行う「自動ピエゾステージ or ガルバノスキャナー」
- 高精細形状の表面観察と物性分布の比較評価を行う「スキャニングプローブ顕微鏡(SPM)」
- 環境制御下での物性評価を行う「クライオスタット or 加熱チャンバー」など
ラマン分光装置の”+α”の測定例
「拡張例1:蛍光寿命測定システム」でみる3次元蛍光寿命イメージ
下記のデータは、本装置に時間相関単一光子測定法(TCSPC)を組み合わせ、蛍光寿命測定を行った結果です。
蛍光強度、蛍光寿命イメージング測定は、高空間分解能で細胞内分子のダイナミクス観察などを捕らえることができます。蛍光分子はそれぞれ固有の寿命をもつ為、蛍光波長が重なって分析しにくい時にも時間分解測定で得られる蛍光強度の減衰曲線を解析することで明瞭な結果が得られます。
東京インスツルメンツは、「高い空間分解能で高感度な3次元蛍光寿命イメージング」の開発にいち早く着手しました。
※蛍光強度:測定対象に光を当てたことにより発した蛍光の強さ
※蛍光寿命:分子が光を吸収して電子励起状態が生成し、光を発して基底状態へ戻るまでの平均時間





(最大3成分まで)

Nanofinderシリーズ 標準仕様の測定例
リチウムイオン電池正極方面のラマン分光分析
下記は、充放電を繰り返したリチウムイオン電池の正極を取り出し、2次元、3次元のラマンイメージングを行ったデータです。
正極材料であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)、それが劣化して生成された四酸化三コバルト(Co3O4)は、いずれも強いラマンスペクトルが検出され、それぞれの分布は明瞭にイメージングされます。
リチウムイオン電池は、充放電を繰り返すことにより、電気容量が劣化します。劣化の主な原因は、活物質の結晶構造が不可逆的に変化、または、結晶性の低下があげられています。本装置は、高空間分解能で形態観察の評価、結晶構造の分布、活物質の状態を明瞭にイメージングでき、電池の製造工程の改善や不良原因の特定を行うための重要な知見が得られます。

コバルト酸リチウム(LiCoO2)600cm-1
3次元ラマンイメージ

四酸化三コバルト(Co3O4)700cm-1
3次元ラマンイメージ

赤色:コバルト酸リチウム(LiCoO2)
緑色:四酸化三コバルト(Co3O4)

赤色:コバルト酸リチウム(LiCoO2)
緑色:四酸化三コバルト(Co3O4)
【測定条件】
試料:リチウムイオン電池の正極方面
露光時間:1秒 (1点あたり)、合計測定時間は約5時間
励起レーザー:532nm
照射強度:5mW (試料上)
対物レンズ:100倍N.A.=0.9
ラマンマッピング点数:32×32×10点
測定例Ex : LiNbO3分極ドメインのテスト評価
仕様
全体性能
●空間分解能(代表値)
波長 | 開口数N.A. | XY方向 | Z方向 |
364nm | 1.4(油浸) | 130nm | 330nm |
488nm | 1.4(油浸) | 200nm | 500nm |
488nm | 0.9 | 250nm | 520nm |
532nm | 0.9 | 275nm | 560nm |
633nm | 0.9 | 320nm | 660nm |
785nm | 0.9 | 390nm | 800nm |
- 感度:Siラマンの4次ピークを1分以内で高感度測定(@488nm,5mW)
- 波数範囲:50 cm-1~5000 cm-1(照射レーザーにより異なります。)
- 波数分解能:0.22 cm-1~20 cm-1(@1.5CCD素子)
- 光学部品の制御はPCにより全自動
- 空気ばね式除振台
顕微鏡部
- 正立型、倒立型(選択)
- 観察用CCDカメラ(EMCCDなども搭載可能)
- 微分干渉観察、蛍光観察、偏光観察、位相差観察 ※オプション
光学系(選択)
- 紫外-可視
- 可視-近赤外
- 紫外ー近赤外
- 偏光測定用光学素子
- 低波数ユニット
- オートフォーカスユニット
- エッジフィルター、ノッチフィルター
- 波数校正ユニット
イメージング分光器
- 焦点距離:52cm、81cm
- 回析格子:4枚搭載可能(自動切替)
50, 100, 150, 200, 300, 600, 1200, 1800, 2400, 2800, 3600, 75(エシェル) G/mm - スリット幅:0~1.5mm(電動)
- 出射ポート数:3(3種類までの検出器が搭載可能)
- 迷光除去比:1×10-5
ピエゾステージ
- X・Y:100μm(300μmも選択可能) Z:100μm
- 位置再現性:<30nmクローズドループ
- ステージ耐荷重:最大1kg
- モーターステージとの組み合わせも可能
ガルバノスキャナー(オプション)
- X・Y:80μm(100倍対物レンズ), 200μm(40倍対物レンズ)
検出器
- 電子冷却CCD:1024×128素子(26μm/素子)(紫外、可視、近赤外タイプなどから選択可能)
- シングルフォトンカウンティング検出器
照射レーザー(選択)
- 325nm, 364nm, 442nm, 458nm, 473nm, 488nm, 514nm, 532nm, 633nm, 785nm 980nm, 1064nm(その他、パルスレーザーなど搭載可能)
制御・解析用コンピュータ/ソフトウェア
- 2D・3Dイメージ回転、任意位置の断面表示
- 分光器駆動(グレーティング変更)、スリット制御
- レーザー切替ミラー(最大5種類のレーザー搭載可能)
- 各種フィルター、偏光子の制御
- ラマンスペクトルの表示
- ラマンピーク波数校正
- ベースラインの補正
- カーブフィッティング
- スペクトルデータベースソフトウェア搭載可能
- 多変量解析ソフトウェア連携可能
その他オプション
- 加熱・冷却ステージ(-180℃~600℃)
- クライオスタット
- 時間分解測定:ストリークカメラ、TCSPC(時間相関単一光子計数法)
- 近接場ラマン測定TERS
更新日 | 更新内容 | サイズ | ダウンロード |
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