多共焦点ラマン顕微鏡 Phalanx-R 概要
多共焦点ラマン顕微鏡 Phalanx-Rは、写真を撮る様に「一瞬」で2次元ラマンイメージを取得できる、世界初のラマン顕微鏡です。
今まで、不可能であった、変化していく化学反応の様子をリアルタイムでイメージングしたり、細胞内部の分子分布状態やその変化を高速に、試料への光ダメージを抑制し、観察することが可能です。
測定原理
21×21点、合計441点に分割した励起レーザー光を一度に試料に集光照射すると同時に、各点からのラマン散乱光も一度に観測します。従って試料やレーザー光を走査することなく一瞬で2次元ラマンイメージをを取得します。
この仕組みにより、Phalanx-Rは、細胞などの試料の光ダメージを抑制し、変化の早い現象や時間変化の観測かつ広範囲の観察が可能です。各測定点は完全な共焦点光学系で出来ており、深さ分解能は900nmあります。よって透明試料でも高コントラストなラマンイメージを取得することが可能になります。
特長
- 世界初!21×21点 同時多点測定
- 細胞などの生体試料において、「無染色・非侵襲」での高速ラマンイメージングを実現
- ソフトマテリアルに対して、微弱レーザーによる測定でも「高感度・高効率」測定が可能
- マルチポイント測定により、カメラのように「一瞬」でラマンイメージング
- 「深さ方向に分解能」を持つ、高感度・高速リアルタイムラマンイメージング
- 3次元イメージング
用途
- 細胞内部の分子分布状態、その変化の観察
- 化学反応のリアルタイムイメージング
- リチウムイオン電池電極の高速イメージング
- 統計解析に必要なデータの高速取得
- in-situでのラマンイメージング
多共焦点ラマン顕微鏡 Phalanx-R 測定例
ポリスチレンビーズ 測定時間は0.5秒!!
測定条件
測定時間:0.5秒、測定点数:441点、対物レンズ:100倍
試料の走査:なし、測定点の間隔:500nm
ラマンイメージ
光学顕微鏡像
グラフェン片
グラフェン片を露光時間10秒で観察。光学顕微鏡像に441点のビームスポットが見えています。
測定条件
測定時間:10秒、測定点数:441点、対物レンズ:40倍
観察領域:25×25μm
ラマンイメージ
光学顕微鏡像
HeLa細胞のラマンイメージング
Cytochromecに由来のピーク、
750cm-1によるラマンイメージ
光学顕微鏡像
細胞内の核、細胞壁のラマンスペクトルとその差スペクトル
東北大学大学院薬学研究科・薬学部 中林孝和教授、梶本真司講師よりご提供
【関連文献】
Mizuki Takeuchi, Shinji Kajimoto, and Takakazu Nakabayashi
Experimental Evaluation of the Density of Water in a Cell by Raman Microscopy
J. Phys. Chem. Lett., 2017, 8 (21), 5241–5245
牛豚合挽き肉
多焦点ラマン顕微鏡(焦点数121)によりスペクトルを取得し,2900cm-1付近の脂肪 に由来するバンド面積値より再構成したもの。
ラマンイメージ
光学顕微鏡像
農業・食品産業技術総合研究機構 本山三知代様よりご提供
【関連文献】
本山 三知代
分光で食肉の素性を探れ!食肉・食品業界で期待される光分析技術
Optronics, 2018, 37 (6), 83-88
本山 三知代
食肉のハラールサイエンスと分光法を用いた豚脂の非破壊検出の可能性
Bioindustry, 2016, 33(4), 33-37
多孔質ポリマーフィルム
測定条件
測定時間:140分、測定点数:11664点、対物レンズ:40倍
試料の走査:あり、測定点の間隔:940nm
ラマンイメージ
光学顕微鏡像
【関連文献】
Ashok Zachariah Samuel, Sohshi Yabumoto, Kenichi Kawamura and Koichi Iwata
Rapid microstructure characterization of polymer thin films with 2D-array multifocus Raman microspectroscopy
Analyst, 2015, 140, 1847-1851
動画紹介とリンク先
製品動画紹介1
製品動画紹介2
Webサイトへリンク
多共焦点ラマン顕微鏡 Phalanx-R(参考仕様)
主な構成 | |
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レーザ波長 | 532nm (他の波長へ変更可能) |
同時測定点のパターン | 最大21×21(合441点)、10×10(合100点)点数など照射パターンの変更可能 |
分光器 | 透過型グレーティング |
検出器 | 電子冷却型CCD検出器 |
光学顕微鏡 | 倒立型、正立型 |
設置面積 | 1500×700×800mm |
重量 | 約100kg |
主な仕様 | |
空間分解能 | X-Y : 350nm, Z : 900nm@532nm、100x 対物レンズ(NA1.40) |
スペクトル測定範囲 | 400 ~ 2400cm-1(グレーティング2400G/mm, 441点測定時) 300 ~ 3100cm-1(グレーティング2400G/mm, 100点測定時) 波数領域、分解能については、任意の仕様に設定可能 |
スペクトル分解能(FWHM) | >7cm-1 (@532nm、2400G/mm) |
オプション | |
オプション | 電動試料ステージ(倒立型)、ガルバノスキャナー(正立型)、 Z走査用ピエゾステージ(対物レンズに装着) |
※ 上記仕様、性能は参考例となります。お客様の御用途に合わせた設定に変更可能です。
更新日 | 更新内容 | サイズ | ダウンロード |
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製品に関するご質問・ご相談
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正立型顕微鏡仕様はありますか?
正立型顕微鏡仕様もあります。 -
対物レンズの交換は可能ですか?
可能です。通常の顕微鏡と同じように、複数の対物レンズをターレットに搭載可能です。対物レンズの倍率を変えると、測定点間隔も変化します。なお、Z軸方向に走査するためのピエゾステージは、一つの対物レンズのみに搭載可能です。 -
XYZ三次元の観測(3Dイメージング)は可能ですか?
可能です。
Z軸走査への対物レンズ用ピエゾステージ(オプション)を搭載し、それを本体
(Phalanx-R)の光学系と組み合わせると、
XY軸方向の走査が必要なく、三次元データを取得できるようになります。
XY軸方向の走査機構(オプション)を搭載すると、高分解能測定かつ広範囲測定にも対応します。
倒立型顕微鏡にはXY電動試料ステージ、正立型顕微鏡にはガルバノミラーの走査機構
を使用します。 -
同時観測点数、測定点の間隔は変更可能ですか?
可能です。ご利用目的に最適な同時測定点数および点間隔にチューニングいたします。 -
532nm以外の励起レーザーを使う事はできますか?
可能です。ご利用目的に応じて、紫外から赤外まで任意のレーザー波長を選択して頂く事ができます。なお、Phalanx-Rでは透過型グレーティングを使用した分光器を使用しており、レーザーの波長に応じてグレーティングの角度を変更することができません。そのため、搭載可能なレーザーは1台となっております。 -
グレーティングの変更は可能ですか?また、何枚までグレーティングを搭載できますか?
多共焦点ラマン顕微鏡 Phalanx-Rでは透過型のグレーティングを利用しています。そのため、一般的な反射型グレーティングのように複数枚のグレーティングを同時に搭載することや、交換する事はできません。また、グレーティングの角度も固定となります。なお、波数分解能や観測波数範囲については、注文時にご指定頂けます。