その他の材料
従来からある材料の加工方法と比べて、パルス幅短いフェムト秒レーザは非常に高精度な加工が可能です。さらに他の手法では作りることができない形状を作製できます。
セラミック材料への溝加工
セラミックは、熱伝導性、電気絶縁性、機械的強度、耐腐食性、耐摩耗性に優れた誘電体材料で様々な用途で使用されています。フェムト秒レーザーを使うと、セラミックのような硬く脆い材料を容易に高精度・高品質な溝加工が可能です。
GHzバーストによるセラミックの加工
GHzバーストモードは加工速度を向上させる画期的な手段です。GHzバーストモードは、高強度フェムト秒パルスをGHz間隔で複数に分割することで、加工速度を向上させることができます。
GaAsを大気中・水中環境下で加工
半導体材料であるガリウムヒ素(GaAs)の加工は非常に慎重に行う必要があります。特に加工に伴う熱を嫌い、さらに高い加工精度、高度な品質管理が求められます。熱の影響が少ないフェムト秒レーザは、半導体材料の加工にも最適です。
FZ-Siウェーハの加工
フロートゾーンシリコンウェハ(FZ-Si(100)、厚さ0.4 mm)をFemtoLux 30で加工した結果、熱の影響は非常に小さく、底面にダメージがない高い加工品質が得られました。
レーザを使った選択的表面の活性化技術(SSAIL)
SSAILは、物理科学技術センターとアコナーが開発した、誘電体材料に直接電子回路を書き込む新しい技術です。
感熱性を持つ有機材料を加工
多くの有機材料は熱に非常に敏感であるため、加工に伴う熱で反りや角部分が焦げたりします。熱の影響がほぼないフェムト秒レーザは、材料に熱を加えることなく加工ができるため、感熱製の材料加工に最適です。
セラミック材料への溝加工

セラミックへの深さ50 μmの溝形
FTMC提供
セラミックは、熱伝導性、電気絶縁性、機械的強度、耐腐食性、耐摩耗性などの優れた誘電体材料として様々な分野で幅広く使われています。しかし、従来の機械的な切削加工ではクラックの発生や破損につながる可能性があります。フェムト秒レーザはセラミックのような硬くて脆い材料も、高精度かつ高品質な加工が可能です。
FemtoLux 30を使って、セラミック材料のスクライビングの初期段階である溝加工した例です。波長 1030、515、343 nmの波長を用いて、スクライビング速度と精度を評価しました。 波長を短くした時の効果を評価するために、試料表面に長さ3 mm、深さ50 μmの溝を作製しました。 波長1030 nmでは最も早い加工速度44.1 mm/sが得られました。波長343では熱の影響部分が8.23 μmから4.88 μmに減少しました。 パルスエネルギーを調整することで、溝の深さを30、50、70 μmと制御することができました。

深さ30、50、70 µmの溝のプロファイル
FTMC提供

形成された溝の光学式3Dプロファイル画像
FTMC提供
GHzバーストによるセラミック加工

異なる操作モードでの
アルミナ正方形フライス削り出し
光学式3Dプロファイル画像
固くて脆いセラミックス材料の加工において、フェムト秒レーザーは品質、精度において非常に効果的です。しかし加工速度においては従来の機械加工に劣る。加工速度を上げるには、一般的に繰り返し周波数を上げる、ビームの分割照射、スポットサイズを大きくするなどの方法が提唱されているが、それぞれ長所と短所があります。
加工速度を向上させる新しいアプローチは、GHzバーストである。 GHzバーストモードは、高強度フェムト秒1パルスをGHz間隔で複数に分割することで、加工速度を向上させる技術です。1つの高エネルギーパルスを複数の小さなパルスに効果的に分割しすることで、レーザの照射効果を最大化して加工速度を向上させます。
これまでの研究では、FemtoLux 30のGHz/MHzバーストモードを使い、アルミナの加工速度を調べました。アルミナをGHzおよびMHzバースト・モードで1 × 1 mm2の四角に切削し、除去された体積を光学式3Dプロフィロメーターで測定しました。その結果、GHzバーストモードで92パルスに分割した場合、加工速度は10.38 mm3/minに向上しました。通常のシングル・パルスモードでの加工速度は6.39 mm3/minです。
GaAsを大気中・水中環境下で加工
半導体材料GaAsの大気中、水中での加工

水環境におけるGaAsの溝形成
FMTC提供
材料への熱の営業がほぼ無く高い加工精度を持つフェムト秒レーザは、ガリウムヒ素(GaAs)といった半導体材料の加工も得意とします。多くの半導体材料は加工に伴う熱を嫌うと同時に高い精度と高度な品質管理が要求されます。
フェムト秒レーザをGaAsに照射した時に発生するアブレーションを、大気中と水中環境下でおこなった時の比較研究があります。FemtoLux 30を使い、波長1030 nm、パルス幅900 fs、繰り返し周波数10、50、200 kHzでテストしました。大気中と水中の環境下でGaAs表面にトレンチ構造(溝構造)を作製した結果、水中ではトレンチの深さが大気中の58 umから105 umに増加しました。また、水中環境の場合、アブレーションで発生したデブリ再堆積する領域が大気中の34 umから7.6 umに減少し、より高品質な加工ができることが分かりました。この研究では、フェムト秒レーザを用いたGaAs基板の加工は水中環境の方がより効率的で高品質な加工ができることを示しています。
加工条件:GaAsのレーザーアブレーションによる水中トレンチ加工

No | 平均 出力 |
パルス 繰り返し 周波数 |
スキャン 速度 |
スキャン 回数 |
エネルギー 密度 |
ハッチ | ライン数/ スキャン |
トレンチの 深さ |
1 | 0.4W | 10 kHz | 50 nm/s | 14 | 13.11 /cm2 | 10 μm | 11 | 105 μm |
2 | 2W | 50 kHz | 200 nm/s | 14 | 13.11 /cm2 | 10 μm | 11 | 99 μm |
3 | 8W | 200 kHz | 1000 nm/s | 14 | 13.11 /cm2 | 10 μm | 11 | 75 μm |
レーザを使った選択的表面の活性化技術(SSAIL)

テンレス鋼切断
FTMC提供
SSAILは、 Center for Physical Sciences and Technology と Akonners社によって開発された誘電体材料に直接電子回路を書き込む新しい技術です。誘電体材料の表面にフェムト秒レーザを照射するとその表面の特性を改質しすることができます。この活性化をおこなった後に銅メッキをおこなうと、化学的に活性化された部分のみが選択的にメッキされます。SSAIL技術を使うと誘電体の表面に回路パターンとなるように改質し、そのあと無電解金属メッキを行うことで回路パターンが形成されます。この技術を使うと線幅1 umの極細の配線が作製可能です。
SSAIL技術はさまざまな誘電体材料に適用できます。(PC/ABS、PMMA、PET、FR-4、Al2O3 セラミック、溶融シリカ、シリコン、その他)

ガラスへのSSAIL
Akoneer社提供

ガラスへのSSAIL
Akoneer社提供

PA4TへのSSAIL
Akoneer社提供

SSAIL
Akoneer社提供
感熱性の高い有機材料加工

テンレス鋼切断
FTMC提供
多くの有機材料は熱に弱く、加工中に反りやエッジが焦げたりします。 材料への熱の影響がほぼないフェムト秒レーザを使うと感熱製の高い有機材料であっても高精度で高品質な加工が可能です。
FemtoLux 30は医療で使われている薄い有機材料の加工に使用されています。 この材料は特に熱に弱い性質を持ちますが、 350 fsという短いパルス幅と高速スキャン光学系を使うと、大きな熱ダメージを起こすことなく切断することが可能です。このときの切断速度は100 mm/sに達します。

感熱性有機材料の切断
FTMC提供

感熱性有機材料の切断
FTMC提供