Andor製品技術資料

2:CCDの種類と読み出し機構

このページでは、Andor製品の微弱光測定に必要な暗電流や量子効率、読み出しノイズなどについてご説明いたします。

2-1.分光用CCDとは

CCD検出器は主に画像測定に利用されていますが、分光器に取り付けて、マルチチャンネル分光器としても使用します。下図はマルチチャンネル分光器の例ですが、入射光は分光器内のグレーティングで分光され、CCD検出器で光を検出します。CCDの横方向が波長になるため、入射光のスペクトルが測定できます。

分光器にはどのようなCCD検出器でも使用することができますが、分光用CCDは分光用途に合わせたセンサー形状になっています。下図のように、分光用CCDは横長の形状になっています。これは、広い波長範囲を測定するのに有効だからです。また、通常の分光器は縦方向の解像度が必要ではないため、縦方向の画素数は少なくなっています。仮にアスペクト比4対3の通常のCCDを使用した場合は、測定波長範囲が狭くなります。逆に、画像測定では分光用CCDは縦方向の画素数が少ないため、広い範囲のイメージを測定するには不向きです。

2-2.CCDの読み出し機構

CCDセンサーは、光を受光し、電荷に変えて蓄積するフォトダイオード部と、蓄積された電荷を転送する転送部(レジスター)と、電荷を電圧に変換するアンプ部で構成されていますが、その構造には大きく分けて、「インターライン」「フルフレームトランスファー」「フレームトランスファー」があります。

インターラインCCD

インターラインCCDは、下図のように受光部と垂直転送部、水平転送部、アンプで構成されています。特徴として、画素ごとに垂直転送部を持っているため、受光画素全ての電荷を一度に垂直転送部に転送することができます。

電荷転送の様子を模したイラストを下図に示します。

① 転送部は光が当たらないように遮光されているため、4つの受光部にのみ光が当たり、電荷が蓄積されます。

② 蓄積された電荷は、一度の電荷転送で隣接した垂直転送部に転送されます。

③ 次に垂直方向に電荷を一画素分転送し、水平転送部に1行分電荷を転送します。次に、水平転送部の電荷を水平方向に順次アンプに転送します。

④ 水平転送が終了後、再び垂直転送部の電荷を水平転送部に転送し、順次アンプに転送します。

インターラインCCDは、画素に隣接して垂直転送部があるため、読み出し中に受光することはありません。そのため、外部にシャッター機構を設ける必要がありません。しかし、構造上、受光部の画素面積(開口率)が小さくなってしまうため、微弱光測定には不向きです。

フルフレームトランスファーCCD

フレームトランスファーCCDは、下図のように受光部、水平転送部、水平転送部、アンプで構成されています。インターラインCCDと異なり、垂直転送部を持っていません。

電荷転送の様子を、下図のイラストで説明します。

① 露光中、受光部には電荷が蓄積されます。

② 全画素の電荷を垂直転送部に一度に転送します。

③④ フルフレームトランスファーCCDと同様に、垂直転送、水平転送を繰り返します。

フルフレームトランスファーCCDには垂直転送部がなく、受光部が垂直転送部を兼ねています。そのため、読み出し中も受光部に光が当たっているため、外部にシャッター機構を設けるなどの工夫が必要です。もしシャッター機構がない場合、下図イラストのように縦方向に像が流れたような画像になります。

しかし、インターラインCCDとは異なり受光部の画素面積(開口率)が大きいため、より多くの光を取り込むことができます。そのため、微弱光の画像測定や、縦方向の分解能が必要ではない分光用途でフルフレームトランスファーCCDが多く使用されています。

フレームトランスファーCCD

フレームトランスファーCCDは、下図のように受光部、水平転送部、水平転送部、アンプで構成されています。

電荷転送の様子を、下図のイラストで説明します。

① 露光中、受光部には電荷が蓄積されます。

② 全画素の電荷を垂直転送部に一度に転送します。

③④ フルフレームトランスファーCCDと同様に、垂直転送、水平転送を繰り返します。

フレームトランスファーCCDは、受光部と同じサイズの垂直転送部を持つことが特徴で、全画素の電荷を一度に垂直転送部に転送するため、読み出し中に露光しません。そのため、外部のシャッターは不要です。また、受光部画素の面積(開口率)が大きく、フルフレームトランスファーCCDと同様に微弱光測定に適しています。

2-3.ビニング

ビニングとは、いくつかの画素を一つの画素に見立てて読み出すモードのことです。ビニングすると、読み出す画素数が少なくなるため、フレームレートが早くなります。また、複数画素に蓄積された電荷を一度に読み出すため、微弱光の測定に向いています。一方、ビニングすると画素数が少なくなるめ、空間分解能は低下します。以下に3つのビニングについて説明します。

n×nビニング (画像測定)

画像測定においてフレームレートを早くしたり、微弱光を測定する場合に使用します。下図は2×2ビニングの例ですが、まず受光部の下2段分の電荷を転送部に転送し、2画素分ずつ読み出します。このサイクルを繰り返すと、得られる画像は4×4画素から2×2画素になります。ビニングによって、1画素あたりの電荷量が多くなるため微弱光測定に適しています。また、読み出し回数が1/4回になるため、フレームレートが早くなります。

FVB (分光測定)

多くの分光測定において、波長分解能は必要ですが、縦方向の解像度は必要ではありません。そのため、分光測定でCCDを使用する場合、縦の画素を全てビニングするFVB (Full Vertical Binning)で使用します。FVBは、下図のように一度に縦方向に電荷を転送してから1画素ずつ電荷を読み出します。例えば、1024×256画素のCCDの場合、1024×1画素のラインセンサーのような結果が得られます。

マルチトラック (分光測定)

分光測定ではFVBを主に使用しますが、イメージング分光器と呼ばれる縦方向に解像度のある分光器を使用すると、複数のスペクトルを同時に測定することができます。例えば、3本の光ファイバーからの光をイメージング分光器で分光すると、下図のイメージのように3つのスペクトルイメージが得られます。これら3つのスペクトル位置に合わせて、CCDを3つのトラックに分割し、それぞれのトラック内をFVBで読み出すことで、複数のスペクトルを同時に測定することができます。

2-4.高繰り返し分光測定(Fast Kinetics Mode、Crop Mode)

CCD検出器によるフレームレートは、FVBでビニングをしても数百Hz程度が限界です。しかし、Fast KineticsモードやCropモードと呼ばれる読み出し方法によって、より高速な読み出しが可能になります。ここでは、分光測定を例にして以下で説明します。

Fast Kineticsモード

Fast Kineticsモードは、中低速のストリークカメラのような動作をします。方法は、下図のように受光部の上段を残して遮光し、遮光部を垂直転送部として使用します。この状態で光を当てると上段のみが露光します。そして、露光時間をゼロにして垂直転送を順次おこなうと、遮光部にスペクトルの時間変化が蓄積されます。垂直転送の速度はおよそ10μ秒なので、10μ秒ごとのスペクトルの時間変化を測定することができます。下図では遮光部が6画素あるので、6つのスペクトルを測定することが可能です。Fast Kinticsモードは、測定できるスペクトル数に制限があるものの、マイクロ秒オーダーの高速現象を測定することできます。

Cropモード

Cropモードは、ラインセンサーのようにCCDが動作する機能です。受光部の下段を残して上部を遮光し、遮光部分を無視して使用します。下図の場合、下段のみが露光します。露光した一段分だけ水平転送部に電荷を転送し、電荷を読み出します。この動作を連続して繰り返すことでFVBよりも高フレームレートで、かつ大量の測定が可能になります。

フレームレート(読み出し速度 2.5MHz)

1600×200pix (DU970N) 1600×200pix (DU971N)
FVB 最大フレームレート 602 377
Cropモード (20行)
最大フレームレート
1316 1316