2019年03月05日
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2019

多共焦点ラマン顕微鏡Phalanx-Rによる研究成果のご紹介

東北大学大学院薬学研究科

東北大学大学院薬学研究科・中林孝和教授、梶本真司講師らにより、多共焦点ラマン顕微鏡Phalanx-Rを使用した画期的な研究成果の報告がありました。

分子クラウディングの観察

同グループは多共焦点ラマン顕微鏡Phalanx-Rを使用し、細胞内の生体分子が高濃度に混み合った環境である、いわゆる「分子クラウディング」を、実験的に観測することに世界で初めて成功しました[1]。

ラマン測定により生細胞中の水の密度分布を測定した結果、細胞質に比べ核内の水の密度が高いことを実証し、核内が分子クラウディングの効果が小さいことを実験的に確認することに成功しました。 一般的な共焦点ラマン顕微鏡の場合、一度に測定できる測定点は1つであるため、細胞の微弱なラマンスペクトル測定は長時間露光が必須であること、さらにマッピング測定となると、長い測定時間を強いられるため、随時状況が変化する生細胞中の水分密度分布の観察は、これまで達成されていませんでした。
中林教授らは、一度に測定点100点(10x10点)を測定できるPhalanx-Rを使用し、測定時間と励起光の影響を最小限に抑えることで、生細胞中の水の定量およびその分布の観察に成功しました。

多共焦点ラマン顕微鏡Phalanx-Rを用いた生細胞の顕微ラマン測定の詳細な手順は、以下の論文および書籍に掲載されています。

C-H str.
O-H str.

図 単一HeLa細胞のC-H伸縮振動バンド(左)とO-H伸縮振動バンド(右)のイメージング。
C-H画像では、核の方が細胞質よりもラマン強度が小さいのに対し、O-H画像では反対に核の方が強度が高くなる。

Reprinted with permission from M. Takeuchi, et al., J. Phys. Chem. Lett., 8 (2017) 5241. Copyright (2017) American Chemical Society.

[1] Mizuki Takeuchi, Shinji Kajimoto, Takakazu Nakabayashi, The Journal of Physical Chemistry Letters, 8, 5241–5245 (2017). "Experimental Evaluation of the Density of Water in a Cell by Raman Microscopy"
[2] Shinji Kajimoto, Mizuki Takeuchi, Takakazu Nakabayashi, Multi-Parametric Live Cell Microscopy of 3D Tissue Models (Springer), 163–172 (2017). "Raman Imaging Microscopy for Quantitative Analysis of Biological Samples"