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2015年12月24日
2017
2015

2次元多共焦点ラマン顕微鏡 開発事例

開発の概要

株式会社東京インスツルメンツは平成23年より学習院大学・岩田耕一教授、早稲田大学・濵口宏夫教授と共同で、ラマン画像を一瞬で観測できる2次元多共焦点ラマン顕微鏡の製品開発を行い、平成25年9月より本製品の受注販売を行っています。本開発は、JST先端計測分析技術・機器開発プログラム(機器開発タイプ)において、濵口宏夫教授を中心に世界で初めて実証実験に成功した2次元多共焦点ラマン顕微鏡の試作機と関連特許を基にして、高性能化と実用化開発を行いました。

今回開発したラマン顕微鏡は、レーザー光を21×21点、合計441点の格子点状(2次元)に分割して試料に照射し、各点からのラマン散乱光を同時に測定します(図1)。そのため、試料やレーザー光を走査することなく、一瞬でラマン画像が得られ、逐一変化する化学反応や、レーザー光で損傷しやすい細胞の観察を高速に行うことができます。

2次元多共焦点ラマン顕微鏡の光学系の概略

図1:2次元多共焦点ラマン顕微鏡の光学系の概略

ハードウェアの開発

今回開発した2次元多共焦点ラマン顕微鏡は、レーザー光を特殊なビームスプリッターで21×21点、合計441点の格子点状(2次元)に分割して試料に集光照射します。100倍の対物レンズを使った場合、500nm間隔で正確に並んだ21×21点(観測視野10×10μm)のビームが試料に一斉照射され、各点からのラマン散乱光は、共焦点光学系を経て全て同時に分光器に導かれます。しかし、分光器に入射する光は、必ず点、又は線状でなければスペクトルを観測できません。そのため2次元多共焦点ラマン顕微鏡では、2次元に配列した21×21点のラマン散乱光を1次元へ変換するために、超高密度・高精度次元変換バンドル光ファイバーを新たに開発しました(図2)。

2次元多共焦点ラマン顕微鏡の製作のために開発したバンドルファイバー

図2:2次元多共焦点ラマン顕微鏡の製作のために開発したバンドルファイバー

バンドルファイバーの入射側は21×21本、分光器に接続される出射側は縦2列(221+220本)にファイバーが配列しています。各測定点のラマン散乱光は入射側から対応するファイバーに入射します。出射側を縦2列とすることで、CCD検出素子の受光面には、左右にそれぞれ221本と220本のスペクトルが投影され、合計441本のスペクトルの同時観測を可能にしています(図3)。また、今回新たに開発した低収差・高効率のイメージング分光器を使うことで、スペクトル同士の情報が混じり合うこと(クロストーク)を防ぎ、高いコントラストのスペクトル像が得らます。超高密度・高精度次元変換バンドル光ファイバーを使うことで、21×21測定点からの散乱光を空間的に分離し、さらにスペクトル間のクロストークを起こさずに観測することができるため、正確なスペクトル観察と高精度のラマン画像の取得が可能となりました。

2次元多共焦点ラマン顕微鏡のCCD上で観測されるスペクトルイメージ

図3:2次元多共焦点ラマン顕微鏡のCCD上で観測されるスペクトルイメージ

ソフトウェアの開発

装置の制御とデータ解析を行うためのソフトウェアはIgorベースで開発しました(図4)。ラマン測定の際には、図3に示したようなCCD上のスペクトルイメージを取り込み、バンドルファイバーの二次元配列と対応する位置情報をソフトが付与した上で全てのスペクトルを保存します。モーターステージ、ガルバノミラー、ピエゾステージの制御もソフト上で行うことができるため、3次元ラマン測定を行う領域を自由に選択することができます。測定したデータに対しては、任意の領域におけるラマンスペクトルを描画することも、測定したスペクトルの任意のピークにおけるラマン画像を視覚化することも、このソフト上で簡単に行うことができます。また、Igorの多様な解析手法を測定データに自由に適用できることも本ソフトの大きな利点です。

2次元多共焦点ラマン顕微鏡のために開発した測定ソフト

図4:2次元多共焦点ラマン顕微鏡のために開発した測定ソフト

総括

上述のハードとソフトの技術を統合し組み上げた製品が2次元多共焦点ラマン顕微鏡「Phalanx-R」となります(図5, 6)。本装置を用いることで、試料やレーザー光を走査することなく一瞬で2次元ラマン画像を観測でき、これまで不可能であった逐一変化する化学反応の様子をリアルタイムにイメージングしたり、細胞内部の分子分布状態やその変化を高速に観察することが可能となります。本開発においても、早稲田大学・濵口宏夫教授のグループが2次元多共焦点ラマン顕微鏡を用いた生細胞の観測を行い、その有用性を報告しています。
本開発は、JST先端計測分析技術・機器開発プログラムの事後評価において、当初の開発目標を達成したため「A」の評価を受けました。

組み立て途中の2次元多共焦点ラマン顕微鏡

図5:組み立て途中の2次元多共焦点ラマン顕微鏡

2次元多共焦点ラマン顕微鏡の製品写真

図6: 2次元多共焦点ラマン顕微鏡の製品写真

関連する製品ページ

・ 多共焦点ラマン顕微鏡 Phalanx-R

・ 高精度バンドルファイバー